心の輝きを発揮させるために

龍渕寺 浅沼 眷昭

 お早うございます。私は御津郡建部町の龍渕寺住職、浅沼眷昭と申します。今朝は、「心の輝きを発揮させるために」と題して、お話をさせて頂きます。
 今年4月のはじめに「脳を死ぬまで進化させる本」という本を読みました。これは浜松医科大学名誉教授、高田明和という先生が書かれたものです。この本の前書きに、「かつて脳細胞は、人の誕生とともに、数は増えないとされました。ところが最近では、70才を過ぎても、脳細胞は増えるということが発見されたのです。この本はどのようにしたら脳細胞が増え、活性化され、年齢とともに輝くような人生が送れるようになるか、その秘訣をお教えしようとするものです」とあります。 そして、この本の最後のところに「これからが本番、心の働きを発揮させるための努力を!」という項目があり、ご自分の体験を元に、次のように語っておられます。
 脳は自分で変えることができます。喜びの多い脳を作ることもできるし、悲しみに満ちた脳にすることもできます。それをするのは自分です。しかし、それには努力がいります。脳細胞は、運動、刺激的環境、訓練により、年をとっても増える。私はそのためには、できるだけ妄想、煩悩を排して、本来の心の輝きを発揮させようと考えています。そのためには、茶道、華道などにより心を静めるとか、読経、写経により無心の時間を増やすことなどは非常によいことと思っています。私自身は座禅をしています。こうして、自分の心を取り巻く暗雲を取り除き、心の光が発揮できればよいのです。心を磨くというのは、自分のためです。自分が自分のためにするのが、求道なのです。あなたは、あなたの求道のやり方を探せばよいので、座禅がもっともよいなどとは考えていません。たとえば日蓮は、心を磨く修行として唱題を勧めていますが、たまたま私は、縁があったから座禅をやっているといえるでしょう。そして、自分の心を磨くことは、同時に他人の心を触発し、人との間に創造的な人間関係をつくることにもなるのです。このように私自身は、これからが求道の時期だと考えて日々を送っています。
 以上のように、高田先生は述べておられます。先生が言われる「求道」ということを、全社員が一丸になって、継続、実践している会社があります。それは東京新宿に本社がある、スーパー「株式会社・三徳」です。その存在を私が知ったのは、東京都大田区にある「大本山池上本門寺」で、毎年10月12日夜に奉行される「万灯練供養」を拝むときに於いて、でありました。わたしは、この万灯供養を昨年の10月を含めて過去4回、拝観いたしました。荘厳にして雄壮華麗なお祭りの中で、地味な存在ではありますが、ひときわ注目されるのが、「妙法」の鉢巻きを締め、「日本山妙法寺」と書かれたうちわ太鼓を打ち、お題目を唱えながら歩む「三徳」の全社員、総勢400余名。昨年の練供養の時は、特に感動深くすると同時に、なぜあれだけの大人数のしかも若い社員を動員できるのか、社長さんは一体どんな人なのだろうかと不思議な思いに強く駆られました。
 そこで、12月18日「三徳」の本社を訪問し、堀内勲会長よりお話を伺うことにしました。応接室に入ると、まず目にはいるのが、富士山と相対して仏舎利塔が写っている大きな写真。会長さんよりお話を聞いて、次のようなことがわかりました。

 仏舎利塔がある所一帯は平和公園として整備され、日本山妙法寺の道場がある。三徳の新入社員は、まずこの道場に入って仏道修行を中心とした新入社員教育を受ける。
 12月には、一日から12月8日の釈尊成道会の日まで、この道場に50人の社員が次々と交代でお参りし、昼食抜きで、夕方まで修行し、翌日は次の50人が来て修行する。
 そして、一月の寒の入りから節分まで、多数の社員が、交代で来て、御殿場の町をうちわ太鼓を打ち、お題目修行の行脚をして世界平和を祈る。
 4月8日、お釈迦様ご誕生を祝う花祭りの日には、都内にある約23カ所の各店で、誕生仏を祭り、お客さんに呼びかけお参りして頂き、甘茶の接待をする。
 更に、新宿の本社をはじめ、各支店でも、毎朝8時から15分間、朝のお勤めをする、夕方も同じく。

 このようなお話を聞いて、富士の仏舎利塔へぜひお参りしたいと思い、本年(平成14年)2月15日に、御殿場市の仏舎利塔へお参りしました。「日本山妙法寺」と書かれた門を入るとすぐに、大型の観光バス5台が目に入ります。そして、中国か韓国のひとらしい観光客が大勢参道を登っています。仏舎利塔・平和公園の維持管理責任者の一人、柏木さんに案内して頂きました。株式会社三徳が実質的な維持管理に当たり、柏木さんを含め三人の方が中心となって仕事をされています。大きな鐘つき堂の横を通って、仏舎利塔へ。正面に輝くお釈迦様の御尊像、観光客の若い人たちも皆、合掌して神妙に拝んでいます。振り返ると、三合目付近まで雪をかぶった雄大な富士山、裾野までくっきりと見えます。

 柏木さんから頂いたしおりに次のように書かれています。
 「富士山に相対して、中天高くそびえ立つこの白い塔は、日本の平和と幸福を祈願して、また、全世界の平和を祈って建立された仏舎利塔です。三万坪の広大な境内に入りますと、富士の裾野を一望に望め、その雄大さは、他に類を見ない。塔の高さ47m50cm、直径は45m。仏舎利塔とは、遠く2500年前に亡くなられたインドのお釈迦様の御真骨をお祭りしてある塔でございます。 お釈迦様は「この世の人は一人残らず私の子どもだ。一人も残らず平和に暮らしていかれるように」と貴い仏法をこの世に残され、無限の高徳を人類の上に与えられました。
 お釈迦様は、私が亡くなって2500年ほどたつと、世の中を救う教えは形ばかりになって、私の教えに違うようになり、そのために世の人は人間の道を踏み誤り、自分勝手な行動をとるようになる。そのあげく、至る所に人と人とが殺し合いを始めるようになるだろう、という厳しい戒めの預言をお残しになりました。そしてその時のために人類の救いの門を開いておかれました。
 その教えの一説に「広供養舎利、咸皆懐恋慕」というお言葉がございます。それは世界の人たちに、私の滅後2500年経ったときには、私の舎利を広く供養しなさい。そして恋いこがれるようにお詣りしなさい。その時こそ、人々の心の中に人類の平和がいかに大切なものであるか、ということがわかってくるのだという意味でございます。
 この御教えを頂いて、東京の新宿にあります食料品店の社長以下全社員400名が一丸となり、日本山妙法寺山主藤井日達上人のご指導の下に、仏舎利塔建立を発願。全社員5カ年の勤労奉仕と一億数千万の浄財を投じて、昭和39年7月23日、落慶開眼されました。
 仏舎利塔の九輪頂上にお祀りしてあるお釈迦様の御真骨は、インドデリー博物館に国宝として納められていた、正真正銘の御真骨で、故ネール主相より日本の平和建設のため送られたものでございます。どうぞ皆様、お仏舎利塔の御宝前にご参拝され、益々平和の意志を固めて、明日への心の糧にいたされますよう、お祈り申し上げます。」

 この仏舎利塔を中心として、熱い信仰の火を、求道の火を燃やし続けているのが、「三徳」の社員の皆様方であります。私たちも、その意気込みを少しでも見習って、「心の輝きを発揮できる」毎日を過ごせるよう精進いたしたいものでございます。
 ご静聴ありがとうございました。今朝は、御津郡建部町中田 龍渕寺住職 浅沼眷昭 がお話しさせて頂きました。
            南無妙法蓮華経