RSKラジオ仏教アワーをお聞きの皆様、おはようございます。2月を迎えまして、未だに朝晩の冷える気候が続いていますが、元気にお過ごしでしょうか。今年はインフルエンザなどの病気が例年以上に厳しいようで体調の悪い方もおられるかと思いますが、どうか健康にはお気をつけください。本日は、岡山市箕島の日蓮宗・呑海寺・修徒・内田智教がお話しをさせていただきます。
 最近の社会情勢を見ていますと「派遣切り」「格差社会」など、社会的弱者に対する逆風が益々強まっているというニュースが流れているのに対し、社会的弱者への社会保障を考える国会議員・官僚といった政治に関わる人達の不祥事や、国民に理解を得られない発言などが毎日報道されています。その中でも私が強く思うことに「高齢者問題」の事があります。昨年4月より「後期高齢者医療制度」という新しい制度が実施されました。この制度は簡単に言いますと、満75歳以上の高齢者の保険料金の見直し、後期高齢者が今まで払わなくて良かった保険料の納付について、とされています。今回の「後期高齢者医療制度」については国民全体が考えなければならないのは当然ですが、一番関係のある後期高齢者にとっては決して生活が楽になりそうもないので多くの後期高齢者にとっては真剣な問題といえると思います。
 一般的に後期高齢者の多数の方は国民年金を受け取りながら生活されていると思いますが、今回の「後期高齢者医療制度」ではこの年金から保険料を新たに天引きしてから年金受給者に渡されることになります。しかも、これからの世の中はどんどん高齢化が進んでいきますので今回の制度上、高齢者の割合が増加すると国やその他の保険納付者の負担が増加する一方で、高齢者自身にも保険料の負担が増加するとされています。さらに今後、今の制度上では高齢者の負担が最も増加するであろうとされていますので、今後の医療・介護において今までと同等のサービスが受けられなくなってくる可能性が大きくなります。後期高齢者の負担が増えて、その後期高齢者の医療・介護のサービスの質が低下する。単なる自己責任ではないような気がします。
 ここまで「後期高齢者医療制度」について簡単にお話させていただきましたが、すべての後期高齢者に当てはまるとは限りませんが低所得者や年金だけで生活されている人にとっては深刻な問題だと思われます。正直なところ、この制度は日本という国を守るためには必要な制度かもしれませんし、我々にはわからない大きな問題に対しての解決策につながっているかもしれません。しかし今回の制度に対して多くの人々が「弱者イジメ」ではないかと不満の声をあげているのも事実です。一般的に社会的弱者といわれる高齢者に対して、こういった負担のかかる形の制度はおかしいのではないか、後期高齢者の多数は仕事もなく備蓄と現状で生活しているのに負担が増える事は将来にとって暗い見通ししかないと思われます。こんな時、この制度に直接関わっていない人達でも、「このままの現状で本当に良いのか?」と考えて一緒に声をあげる必要があると私は考えています。こういった行動に対して、宗祖・日蓮大聖人は『異体同心』という言葉を残されております。異体とは一人一人は姿・形・性質や生活環境が違うということ、同心は多くの人が目的を一つにして一致団結することです。この言葉には人々の心を一つにまとめれば数の大小ではなく、その心の強さが物事を成就する力になるという意味がこめられています。我々一人一人の声は確かに小さいものでありますが、この小さな声も一つにまとめれば強い力となり、多くの人々を動かす力となります。大事なことは目指すべき目標に向かって全員が同じ方向を向き、一生懸命に進むという事です。
 昔の人々は何か困ったとき、近くの人々が集まり一致団結して国やお上に対して直談判することを行っていました。現在でもデモ行進・ストライキ等の行動が行われています。手段の良し悪しはありますが、人々はこういった行動を起こすときには、本当に一つの目標に向かって進んでいると感じます。正直なところ、こういった行動でも一人一人の思惑は違うかもしれませんが、こういった集団の力は本当に力強いものがあると私は思います。
 最近の人々は『異体同心』の心を忘れてしまっているのではないかと思うことが多々あります。集う場所が同じでもその心が同じではなく、自分の事ばかりを考えているような行動が非常に目に付きます。私たちは、この国そして世界全体を見た時に個人一人だけの幸せに目がとらわれ過ぎているような気がしてなりません。本当に個人が幸せだったら他の人はどうでも良いのでしょうか。私は本当に大事なのは全体の幸せを考えてみんなで行動することではないかと思っています。人々は一人だけで生きるのではなく、多くの人と繋がって生きているのだから、全ての人の、全ての心を良い方向に向けて一つにする事が全体の幸せに繋がっていると思います。どうか皆様も一人一人が助け合いの手を繋ぎ、多くの人と繋がって生きていってくだされば私はどんな辛い現状も救われると思っております。
 本日は最後までお聞きくださいまして、どうもありがとうございました。どうか皆様、『異体同心』の心を持って日々の生活に役立ててくだされば幸いに思います。それでは本日も皆様にとって良い日であることを心から祈念いたしまして終わりの挨拶とさせていただきます。
 RSKラジオ仏教アワーをお聞きの皆様、本日は岡山市箕島の日蓮宗・呑海寺・修徒・内田智教がお話しをさせていただきました。