RSKラジオをお聴きのみなさん、おはようございます。本日は、岡山市にあります、日蓮宗太然寺、住職大野玄秀がお話をいたします。
 さて、本日は7月14日、東京では、お盆の真っ最中です。一般にお盆と言えば8月ですが、東京では7月に行われます。
 お盆は、7月の15日に、お釈迦様の十大弟子の一人、目連尊者が、その母親が餓鬼道に落ちて苦しんでいるのを救ったのが起源とされています。すなわち、目連尊者が、お釈迦様の助言をいただいて、修行していた僧たちに、様々な食べ物・飲み物を用意して、母親を供養したのです。その結果、母親は餓鬼道を抜けることができました。それにならい、7月15日には、お坊さんを呼んで、お経をあげていただくようになったと言われています。明治になって新暦が採用されてからは、東京以外では月遅れの8月に行うようになりましたが、東京だけは、そのまま、7月15日にかけて行っているようです。
 お盆のお祀り方も、宗派、地域、お寺によってさまざまですが、岡山では、13日からはご先祖様をお仏壇からお床にお出しし、台にこもやゴザを引き、お位牌様を並べます。そして、それぞれのお位牌様の前にお茶、ご飯、おかず、果物等を仏様の数だけ、お供えします。また、ご先祖様がそれに乗って早く帰って来られるように、キュウリで馬を作ったり、15日には、ゆっくりと帰っていただくようにと、なすびで牛をつくって、祭壇の片隅に置いてある家もあります。そして、馬はお位牌様の方を向かせ、牛は帰る方向、縁側の方に向かせてあります。本当にご先祖様を思いやる心が伝わってきます。
 また、初盆の時にいただいた灯籠やちょうちんを並べて、ご先祖様をお迎えします。縁側や、窓の近くには、六角灯籠をぶら下げて、六角灯籠というのは白木でできた、組立式のものですが、それにお灯明をつけて、最近は豆電球をともして、ご先祖様が帰ってこられる目印にします。特に初盆の時には、わたしが住職をしていますお寺では、戒名とお経を書いた紙をそれにはって、迷わず帰ってこられるようにしています。
そのようにして15日までお祀りし、15日の夜、それらのお供え物をワラでできた船ににいれて、精霊送りに持って行きます。昔は、近くの川に流していたそうですが、環境の問題もあって、今では市役所の方が各町内に集めに来られますね。
 また、お盆の終わりの行事として、「送り火」があります。特に8月16日に京都で行われる、大文字焼きは有名です。その他、「妙法」の字や鳥居、船を形どったものもあります。岡山でも「和」文字焼きというのがありますね。それらは、すべて精霊を送るためのものです。また、夏の風物詩と言われる打ち上げ花火も精霊を送る為のものだったようです。
 岡山市の仏教会でも毎年8月16日の夕方より、下石井公園近くの西川で、灯籠流しを行っています。紙でできた組み立て式の灯籠に、○○家先祖代々の霊などと書き、ロウソクに灯をともして西川に流します。夕闇の中、二千を超える灯籠が流れてゆく様は、本当に幻想的です。とは言っても、やはり環境の問題で、川下の方で回収をしなくてはなりません。今年は、下石井公園が工事中のため、受付、お経をあげる場所が近くのミノルガーデンビルの中になりそうですが、お近くの方は、ぜひともいらしてください。もちろん、当日、受付で灯籠を求められて、灯籠流しの供養をすることもできます。
 このご先祖様をお迎え、そしてお送りするというお盆の行事ですが、核家族化が進み、お年寄りだけで住んでいる家が多くなってきた昨今、引き継がれることがなかなか難しくなってきています。また、お年寄りが、元気なうちはいいのですが、年を取るにつれて、お墓の掃除に始まって、お位牌様をお床にお出ししたり、お供えをしたりすることなど、ご先祖様をお祀りすること自体が、だんだんとできなくなります。
 県外とかに出られている、若い次の世代の方々、どうかお盆には早めに実家に帰ってご両親を手伝って、ご先祖様をお迎えしてはどうでしょうか。小さい子どもたちがいれば、もちろん一緒にします。そうすることによって、その家の代々引き継がれてきた祀り方、しきたり等がわかります。財産だけを引き継ぐのではいけません。しっかりと「信仰」すなわち「ご先祖様を敬う気持ち」も相続して、次の代に引き継いで欲しいものです。
 ところで、最近は、「物は豊かになったが、心が貧しくなった」ということをよく聞きます。
 お釈迦様の教えに、四つの、量の無い心と書き、四つのはかりしれない心「四無量心」があります。
すなわち、「慈しむ心」と書いて、「慈の心」、「悲しむ心」と書いて「悲の心」、「喜ぶ心」と書いて「喜の心」、「捨てる心」と書いて「捨の心」の四つの心です。
 まず、「慈の心」ですが、すべての人、すべてのものを慈しむ心です。「慈しむ」という言葉も最近では死語のようになってきました。「愛する」と言った方がいいかもしれません。親が子どもを愛すれば、子どもにも愛する心が育ちます。みんなが地球を愛すれば、環境問題も解決するかも知れません。
 次に、「悲の心」ですが、他の人が悲しんでいるとき、一緒に悲しむ心、悲しんでいる人を救ってあげたいという心です。神戸大震災の時、テレビを見て、多くの人達がボランティアに駆けつけました。それらの人達は「悲の心」をもっているのです。
 次に、「喜の心」ですが、他人の幸福を自分の幸福のように共に喜ぶ心です。簡単なようですが、知り合いの人が、仕事が上手くいったり、大金を手に入れたり、美人の恋人を持ったりすると、なかなかすなおには喜ぶことができません。これは、嫉妬という感情で、人間の誰もがもつものですが、それらを素直に喜べる心を持てたらどんなに楽しい人生でしょうか。
 四つめは、「捨てる心」ですが、他の人に施した恩も、人から受けた害も忘れ、一切の報いを捨て去る心です。
これらの4つの心を養うことで、真の幸福を得るとお釈迦様は説かれています。しかし、この心は一朝一夕で得られるものではありません。まず、どれか一つ、できるものから始めてはどうでしょうか。先程お話しをしました、ご先祖様を敬う気持ち、これも立派な「慈しみ」の心ですね。
 本日は日蓮宗太然寺住職、大野玄秀がお話しをしました。
 なお、本日のお話は、インターネットで見ることができます。「仏教アワー」で検索してみてください。日蓮宗のお坊さんのお話だけですが、過去のお話も載っています。
 では、またの機会がありましたらよろしくお願いいたします。 南無・・・